育成就労制度は2027年に開始予定の制度のため、「何か問題点は無いの?」「技能実習制度と何が違うの?」と混乱してしまう方もいるでしょう。

育成就労制度は、技能実習制度の問題点を改善するために創設された制度です。外国人の人権保護や働きやすさを重視した内容になっていますが、企業にとってはメリット・デメリットの両方がある制度といえます。とはいえ、人手不足解消には最適の制度なので、積極的な利用を検討しましょう。

本記事では、育成就労制度の問題点や問題点を改善するための対策を紹介します。

育成就労制度とは

育成就労制度とは、外国人人材の育成および人材確保を目的とした、技能実習制度に代わる制度です。外国人労働者を雇用する企業にとって、関係性の深い制度といえるでしょう。

ここでは、育成就労制度の概要や対象職種、ほかの外国人雇用に関する制度との違いを解説します。

育成就労制度の概要

育成就労制度をわかりやすく説明すると、人手不足の業界において外国人人材の育成と人材確保の両方を行いやすくするために創られた制度です

廃止が決定している技能実習制度に代わり、2027年中のうちに制度が開始されることが予定されています。政府が繰り返し有識者会議を実施し議論を重ね、2024年3月に技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設が閣議決定されました。

育成就労制度は、外国人労働者が3年の期間を経て技能を修得し、特定技能1号の水準まで到達することを目的に運用されます。特定技能制度とは、人手不足の業界での人材確保を目的とした制度のことです。在留資格を「特定技能1号」に変更した外国人は日本での長期的な就労が可能となります。

育成就労制度は外国人労働者を長期的に雇用し、企業に定着してもらうことを目的とした制度といえるでしょう。

育成就労制度の対象職種

育成就労制度を利用できる対象職種は、以下の16種類が予定されています。

  • 1.介護
  • 2.ビルクリーニング
  • 3.工業製品製造業
  • 4.建設
  • 5.造船・舶用工業
  • 6.自動車整備
  • 7.航空
  • 8.宿泊
  • 9.自動車運送業
  • 10.鉄道
  • 11.農業
  • 12.漁業
  • 13.飲食料品製造業
  • 14.外食業
  • 15.林業
  • 16.木材産業

育成就労制度の対象職種は「育成就労産業分野」と呼ばれます。

この16種類の対象職種は、特定技能制度の対象職種と同じです。育成就労制度は特定技能制度への移行を前提としているため、制度を使用できる職種も合わせています。

育成就労制度と技能実習制度の違い

廃止される技能実習制度と育成就労制度には、いくつかの制度上の違いがあります。

育成就労制度 技能実習制度
制度の目的 ・人材育成
・人材確保
・人材育成
・国際貢献
転職 条件を満たせば可能 原則不可
対象職種 育成就労産業分野 移行対象職種
在留期間 原則3年 最長5年
関係機関 監理支援機関 監理団体
在留資格 育成就労 ・技能実習1号
・技能実習2号
・技能実習3号
送り出し機関の利用 MOC作成国のみ MOC作成国以外も可能
日本語の条件 あり 介護職種以外はなし

詳しくは後述しますが、育成就労制度は技能実習制度のさまざまな問題点を改善するため、さまざまな変更点が変更されました。

特に技能実習制度の「国際貢献」という制度の目的が除外されたこと、そして転籍が可能になったのは大きな変化といえるでしょう

育成就労制度と特定技能制度の関係

  • 育成就労制度は特定技能制度への移行を前提としており、非常に関係性が深く似ている部分がたくさんあります。とはいえ制度としては別物なので、それぞれの相違点を知っておきましょう。
育成就労制度 特定技能制度
制度の目的 ・人材育成
・人材確保
人材確保
技能試験 なし あり(特定技能評価試験)
転籍・転職 条件付きで可能 可能
在留期間 原則3年
(再試験で1年延長可能)
・特定技能1号:最長5年
・特定技能2号:更新回数の制限は無し
日本語要件 ・日本語能力A1相当以上
・日本語能力A1に相当する講習の受講
・JLPTのN4以上
・JFT-Basicの合格
在留資格 育成就労 ・特定技能1号
・特定技能2号

育成就労制度と特定技能、どちらを利用して外国人を雇用するかは企業によって判断が分かれます。

育成就労制度では、在留資格を「特定技能」に移行するまでの育成期間が必要です。しかし、人材の間口が広いため雇用しやすいメリットがあります。

特定技能制度では、すでに一定以上の技能および日本語能力を持った外国人を雇用できるため、即戦力としての活躍が期待できます。

どちらの制度が自社に合っているのか、さまざまな面を考慮しての検討が必要です。

育成就労ができたのは技能実習の問題点を解消するため

技能実習制度が現行の技能実習法の施行から10年足らずで廃止になったのは、さまざまな問題点が国内外から指摘されてきたためです。

ここでは、育成就労制度が創設されるきっかけになった技能実習制度の問題点について解説します。

問題点1.制度の目的と現状の違い

技能実習制度の大きな問題として指摘されていたのは、制度の目的と実際の運用方法に違いが生じていた点です

技能実習制度は、元々国際社会における「人づくり」に協力し、国際貢献に繋げることを目的に創られた制度です。開発途上国の若者に日本の技能や技術、知識を教え、母国の経済発展に役立ててもらうために運用されてきました。

しかし実際には、知識や技能の移転よりも「労働力の確保」として制度が利用され、必要な教育や指導を行わないような企業が存在していたのです。

賃金を受け取り実際に就労しながら実習を行っているため、どうしても労働力として重宝される点は変えようがありません。

そこで、育成就労制度では「人材育成」と「人材確保」という目的を掲げ、実態とのギャップが生まれないようにしました。

問題点2.制度上技能実習生の権利保護が不十分だった

技能実習生の人権侵害も、問題点として挙げられます。

技能実習を実施する企業の一部には、技能実習生を「安く便利に雇用できる人材」と考える風潮がありました。人権保護の意識が薄く、賃金の未払いや長時間労働、パワーハラスメントなどが横行していたのです。

技能実習生は日本語能力が不十分なケースが多く、日本に頼る人もいないため、何かあってもなかなか声を上げられません。また、「転籍(転職)ができない」「ブローカーに手数料を払うために借金をして日本に来ている」などの制度上の問題で、通常の労働者よりも立場が弱くなりがちでした。

育成就労制度では、より監理を強化し、悪質なブローカーを排除する仕組みを作るなどして、外国人の人権を適切に保護できるよう運用されます。

問題点3.技能実習生の失踪が相次いでいた

技能実習生の失踪は、社会問題として大きく取り上げられました。前述したとおり、技能実習生は原則転籍(転職)ができません。そのため、職場や賃金に不満があったとしても自分の意思で環境を変えられないのです。

技能実習を辞めたいが、母国に帰りたくはない場合、技能実習生は逃げ出してほかの場所で働くことを選択してしまいます

出入国在留管理庁の「技能実習生の失踪者数の推移(令和2年~令和6年)」によると、2024年は6,510人の技能実習生が失踪しています。そのうち3,559人の技能実習生はあとから居場所を特定されていますが、残りの2,951人は所在不明のままです。

失踪した技能実習生は在留資格を失うため、通常の仕事には就けません。不法滞在者として違法な仕事に就いたり犯罪を犯したりする人もいるでしょう。技能実習生の失踪は日本の治安維持にも影響しているのです。

育成就労制度では、条件付きで外国人の転籍を認めており、また人権保護の取り組みも強化されるため、失踪は大幅に減少すると考えられています。

参照元:「技能実習生の失踪者数(速報値)

育成就労制度のメリット・デメリット

技能実習制度に代わりスタートする育成就労制度にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下の表に一覧でまとめました。

育成就労制度のメリット 育成就労制度のデメリット
長期的な雇用ができる コストが掛かる
技能実習生より日本語能力が高い 転職されるリスクがある
幅広い業務に従事できる 受け入れられない職種が出てくる

詳しくは次の項目で説明しますが、雇用する企業からするとメリットだけでなくデメリットといえる部分もあります。

よく理解したうえで、受け入れるかどうかを決定しましょう。

育成就労制度の5つの問題点

育成就労制度はいくつかの問題点が懸念されています。ここでは企業側の視点から見たデメリットを解説するので、自社での採用活動に役立ててください。

問題点1.人材が転籍する可能性がある

育成就労制度では、以下の条件を満たせば転籍ができるようになります。

  • 転籍先の業務が転籍元で行っていた業務と同一の業務区分であること
  • 転籍元で働いていた期間が育成就労産業分野ごとに定められている1年~2年の所定期間を超えていること
  • 外国人が技能検定試験基礎級などおよび分野ごとに設定するA1~A2相当の日本語能力に係る試験に合格していること
  • 転籍先の育成就労実施者が適切と認められる一定の要件に適合していること

※今後も条件が追加される可能あり

つまり、1~2年というある程度の時間を掛けて教育を行った育成就労外国人が、ほかの同業種の企業に移ってしまう可能性があるのです。転籍があった場合、受け入れに掛かった初期費用などの補填も検討されていますが、企業にとってマイナスになることには変わりありません。

外国人にとっては職場の選択肢が広がるというメリットがありますが、企業にとっては問題点ともいえるのではないでしょうか。

問題点2.教育コストが増加する

日本語を教育するコストが増加する可能性があることも、問題点の一つです。

育成就労制度では、段階的に外国人の日本語能力を向上させる取り組みが求められます。具体的には、3年間の育成期間の間に日本語能力をA2相当まで引き上げなければなりません。そのために、企業が費用を負担し、日本語教育の機会を提供する必要があります。

技能実習制度の場合は、送り出し機関の入国前講習や監理団体による入国後講習で日本語教育の機会が設けられていました。育成就労制度では企業側の教育が義務化されるため、教育コストの増加を懸念する声があります。

問題点3.民間の職業紹介業者は利用不可

育成就労制度では、人材の過度な引き抜き行為や都市部への人材集中を防ぐため、制度開始から当面の間は民間の職業紹介会社の介入は原則不可となる予定です。

日本ですでに働いている育成就労外国人を雇用したい場合、採用経路が限られてくるでしょう。

問題点4.技能実習制度より受け入れ費用が掛かる

技能実習制度よりも、育成就労制度のほうが受け入れのために掛かる費用が増加すると考えられています。

理由は、今まで外国人負担だった渡航費用や送り出し機関に支払う費用の一部が、企業負担になるためです

外国人の人権を守るための仕組みとはいえ、1人当たり50~100万の費用増加が見込まれており、複数人を雇用する企業の場合は負担が大きくなる可能性があるでしょう。

問題点5.技能実習制度より対象職種が減る

今まで技能実習を実施した企業の場合、育成就労制度が対象職種になっておらず、外国人が受け入れられなくなる可能性があります。

技能実習制度では受け入れ対象職種が作業ごとに細分化されていました。一方、育成就労制度では、分野ごとの受け入れ方式になります。そのため、育成就労制度の枠組みから外れる作業も出てくるでしょう。

育成就労制度で行える具体的な業務については議論が進められています。正式な発表を待ちましょう。

育成就労制度の問題点を解消する取り組みを解説

育成就労制度はいくつかの問題点が懸念されていますが、取り組み次第で企業の負担を軽減できる可能性があります

ここでは3つの取り組みを紹介するので、育成就労制度の活用を検討している企業の方は参考にしてください。

1.日本語教育はオンラインや地域との関わりを活用する

日本語教育に掛かる費用は、オンラインや地域との関わりを活用すると抑えられるでしょう。

日本語教師を企業に招いて講習を行うと費用がかさみがちです。一方、オンラインを活用するとある程度費用が抑えられます。また、AIを活用した会話練習などを取り入れるのもおすすめです。

自治体の日本語教育支援を行うのも方法の一つ。自治体によってはビジネス日本語eラーニング研修やボランティアの日本語教育を受けられる可能性があります。

また、政府や自治体主導で育成就労外国人を対象とした日本語教育支援が行われる可能性も。工夫して、日本語を教育できる環境を整えましょう。

2.長く働きたくなる職場環境や福利厚生を提供する

外国人の離職を防ぐためには、長く働きたいと思ってもらえる環境作りが重要です

前述したとおり、育成就労制度では一定の条件を満たせば転籍が可能です。職場環境や給料、福利厚生などに不満があれば、他社に移ってしまうことも十分考えられるでしょう。同郷の外国人労働者は横の繋がりが広く、条件の良い会社・悪い会社の情報はすぐに広まります。

外国人の早期離職を防ぎ、企業への帰属意識を高めるためには以下のような対策を検討してみましょう。

  • 同業他社より高水準の給与を支給する
  • 定期的に昇給の機会を設定する
  • 新しく設備の整った寮を用意する
  • 外国人の母国語が理解できるスタッフを配置する
  • 困ったことがあったらすぐに相談できる窓口を作る
  • 日本人や他国出身の外国人と交流する機会を作り、孤立させない
  • 母国に帰りやすいよう休暇制度を用意する

外国人が日本で転職をするのは難易度が高いため、同じ会社で働き続けられるに越したことはありません。育成就労外国人は、育成就労期間を終え在留資格を「特定技能」に移行すれば長期的な就労が可能です。

長期の人材確保に繋がるからこそ、長く働いてもらえるような職場作りを目指しましょう。

3.監理支援機関やハローワーク経由で外国人を受け入れる

育成就労外国人の転籍に、民間の職業紹介会社は介入できない予定です。しかし、ハローワークや監理支援機関、外国人育成就労機構が転籍支援を行うため、連携を取ることで他社で働いていた育成就労外国人を雇用できる可能性があります。

監理支援機関とは、外国人の募集や入国のための各種手続きを行う非営利団体のことです。外国人育成就労機構は、企業が作成した育成就労計画の認定や企業への立ち入り検査、外国人の相談対応などを行う機関を指します。

民間の職業紹介業者を利用できないからといって、自力で探さなければいけないわけではありません。これらの機関を上手に活用しましょう。

まとめ

育成就労制度は、技能実習制度で指摘されていた問題点を改善するために創設されます。長期的な雇用が可能なうえ、幅広い業務に従事してもらえるので、人材確保のためには最適の制度です。

育成就労産業分野に該当する企業の方は、ぜひ利用を検討してみましょう。

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