「領事館と大使館の違いが分からない」という方もいるでしょう。いずれも「在外公館」と呼ばれる外務省の機関ですが、メインとしている活動が異なります。領事館が自国民のサポートを中心とするのに対し、大使館は主に他国との外交交渉を行う機関です。
このコラムでは、領事館と大使館の違いを解説します。それぞれの役割や業務内容、企業側が外国人雇用で利用する場面についても紹介。ぜひ参考にして、外国人雇用にお役立てください。
領事館と大使館の違いとは
領事館と大使館は、どちらも「在外公館」と呼ばれる外務省の機関ですが、それぞれ担当する役割や設置場所が異なります。
| 領事館 | 大使館 | |
| 役割 | 現地に滞在している自国民のサポート | 相手国政府との交渉や連絡といった外交活動 |
| 設置場所 | 主要都市に複数設置可能 | 原則として首都のみ |
| 治外法権 | 認められていない | 認められていない |
領事館は「領事」が長で、外国で自国民の保護を目的とした業務を行う施設です。一方、大使館は「大使」が長で、主に国家間の外交交渉を担います。ただし、大使館でも自国民の保護は行っており、海外でトラブルに巻き込まれたときにサポートを受けることが可能です。
なお、派遣国の主要都市に複数設置できる領事館に対して、大使館は特別な事情がある場合を除いて、原則首都に1箇所だけ置かれます。たとえば、日本のアメリカ大使館の設置場所は東京都のみですが、アメリカ領事館は札幌や大阪などにも設置されているのが違いです。
また、「領事館や大使館には治外法権がある」と勘違いしている人もいますが、これは古い考えに基づく概念で実際は異なります。国際法により現地の警察や公務員が勝手に立ち入れない「不可侵の権利」は存在するものの、在外公館の敷地内でも法律を犯せば、正当な手続きのもと現地の警察や必要機関に身柄を引き渡されるのが実態です。
領事館とは
領事館とは「領事が職務を行う在外公館」のことを指します。館長の階級によって名称が異なり、総領事が館長の場合は「総領事館」、領事が館長の場合は「領事館」、副領事が館長の場合は「副領事館」、代理領事が長の場合は「代理領事事務所」です。領事館の設置は任意であるため、派遣国によって設置される数が異なります。
領事館の役割
領事館の役割は、大きく分けて以下の4つです。
- 現地に滞在する自国民の保護
- 派遣国に関する情報収集
- 国際交流や広報
- 戦争や災害といった不測の事態が起こった際の大使館機能の補完
領事館は、派遣国で事故や災害などが発生したときに、自国民の救護や安否確認、被害者家族への連絡、帰国のサポートなどを行います。また、現地の法律や文化関係、テロ発生時などの情報収集も領事館の仕事です。
戦争や災害といった不測の事態が起こった際に、大使館と領事館がどちらも機能停止しないよう、領事館は基本的に首都とは別の主要都市に設置されています。
領事館の業務内容
領事館が行う主な業務は、以下のとおりです。
- 自国民の保護・帰国支援
- 査証(ビザ)の発行
- 旅券(パスポート)の発給
- 法的手続きによる各種証明書の発行
- 接受国の情報収集
- 友好親善活動
- 一時滞在している自国民へのサポート
- 海外在留者への投票支援
先述したように、領事館では主に自国民に対するサポート業務を行っています。ここからは、それぞれの業務の詳細を見ていきましょう。
自国民の保護・帰国支援
領事館の重要な業務の一つは、自国民が駐在国で事故や事件、災害、テロなどに巻き込まれた際の保護・帰国支援です。日ごろから連絡先を確認し、緊急時の心得についても発信するなど、迅速な対応ができるよう備えています。
査証(ビザ)の発行
自国へ渡航したい外国人に対して、査証(ビザ)の発行を行うのも業務の一つです。外国人雇用を検討している企業にとっても、ビザの申請・発行に関わる手続きは身近な作業といえます。取得したいビザの種類に合わせて申請しましょう。
旅券(パスポート)の発給
領事館では、渡航に欠かせない旅券(パスポート)の発給も行っています。新規取得のほか、更新や紛失したパスポートの再発行手続きも可能です。盗難被害に遭ったり紛失したりした自国民に対して、仮のパスポートを発行することで帰国や旅行継続を支援します。
法的手続きによる各種証明書の発行
現地での住所や結婚、署名などに関わる各種証明書の発行も領事館の業務です。具体的には、在留証明や身分上の事項に関する証明、印鑑証明に代わる署名証明などを発行しています。証明書によって申請に必要な書類や手数料が異なるものの、オンラインでの申請が可能です。
接受国の情報収集
領事館を受け入れている接受国に関する情報収集を通して、自国民へのアドバイスや情報提供に役立てています。現地の法律や施策は変わることがあるため、適宜正しい情報を提示しトラブルを未然に防ぐのが目的です。
友好親善活動
領事館は自国と相手国をつなぐ架け橋として、両国の友好を深める活動にも取り組んでいます。具体的には、自国の文化への理解を深めてもらうための交流や情報発信、地域コミュニティとの連携などです。
一時滞在している自国民へのサポート
長期滞在者だけでなく、旅行や出張などで一時滞在している自国民へのサポートも行います。急病や怪我、事故といった緊急時には、必要に応じて現地の医療機関や弁護士などの情報を提供することも業務の一つです。
海外在留者への投票支援
海外に在住している自国の有権者に対して、国政選挙への投票支援も行っています。これは「在外選挙」と呼ばれ、所定の手続きを完了させることで外国にいながら自国の選挙へ投票できる仕組みです。なお、国によっては必ず帰国のうえ投票しなければならないところもあります。
大使館とは
大使館とは「大使を長とする在外公館」という意味です。大使館のトップは「特命全権大使(通称:大使)」といい、外交使節団の最上位の階級として多くの外交特権が与えられています。
大使館の役割
大使館は、国を代表して相手国政府との話し合いや連絡を行うのが主な役割です。また、自国と自国民の利益の保護や外国との文化交流の促進も役割の一つに含まれます。
領事館は外交問題や政治問題に対応する法的権限をもっていませんが、大使館は特命全権大使が国を代表して交渉する権限をもつ機関です。そのため、各国の首都に設置されるのが原則となっています。
大使館の業務内容
大使館が行う業務は、以下のとおりです。
- 自国民の保護
- 査証(ビザ)の発行
- 旅券(パスポート)の発給
- 法的手続きによる各種証明書の発行
- 派遣国にある企業へのビジネス支援
- 接受国の情報収集・伝達
外交問題や政治問題に対応する法的権限をもっているため、領事館よりも外交的な職務が多くなっています。ここからは、それぞれの業務の詳細を見ていきましょう。
自国民の保護
大使館も領事館と同じように、事故や災害が発生したときの自国民の救護・安否確認といったサポートや情報収集を行います。災害や紛争時には連絡体制を整備し、自国民の避難や帰国支援を実施するのも役目です。
査証(ビザ)の発行
査証(ビザ)の発行も業務の一つですが、主に政府関係者や外交官向けのビザの手続きが中心となります。大使館と領事館でそれぞれ役割をもたせることで、政府関係者や外交官がスムーズに国外で活動できると考えられるでしょう。
旅券(パスポート)の発給
大使館も旅券(パスポート)の発給業務を行っています。海外でパスポートを紛失した際の再発行手続きも受け付けているなど、緊急時の支援も重要な役割です。
法的手続きによる各種証明書の発行
領事館と同じように、在留証明や署名証明といった各種証明書の発行も業務に含まれます。窓口・郵送・オンラインによる申請方法がありますが、基本的にはオンライン申請が推奨されているようです。
派遣国にある企業へのビジネス支援
大使館をはじめとする在外公館には、自国の個別企業を支援する窓口が設置されています。具体的には、「現地の規制や制度、治安に関して教えてほしい」「企業が参加できる展示会などの情報が知りたい」といった相談に対応する窓口です。そのほか、「現地の政府や法律、制度などによって不当に不利な状況にある」という問題にも介入します。
ただし、原則として私企業間の紛争に干渉することはできません。
接受国の情報収集・伝達
大使館は、接受国の政治や社会情勢、経済に関する情報を常に収集・分析し、本国政府へ伝達する役割をもつ機関です。これらの情報は自国の外交政策に欠かせないものであり、諸外国との関係維持や強化に役立てられます。
領事館と大使館には共通点もある
役割が異なる領事館と大使館ですが、業務内容には以下のような共通点もあります。
- 査証(ビザ)の発行
- 自国民の緊急支援・保護
- 自国民向けサービスの提供
先述したように、領事館と大使館の駐在地を分けることで、万が一どちらかが機能停止したとしても自国民に対する最低限のサポートは実施できる仕組みです。外国人を雇用した場合や海外出張では、最寄りの在外公館の場所を把握しておくのが望ましいでしょう。
外国人雇用ではどんなときに領事館や大使館を使う?
外国人雇用を検討している企業は、人材を受け入れる過程で領事館や大使館を利用する機会があります。ここでは、外国人雇用で両機関を利用する場面についてチェックしてみましょう。
領事館を利用する場面
領事館においては、海外から外国人を呼び寄せる際のビザ申請で重要な役割を果たします。
外国人が就労を目的に日本へ入国するには、在留資格を認められたうえでビザを取得しなくてはなりません。就労ビザの取得には、在留資格の申請が許可されたときに交付される「在留資格認定証明書」が必須です。日本での在留資格認定証明書の申請は、外国人を雇用する企業が行います。一方、ビザは外国人本人の申請が必要です。
また、外国人従業員の身分や資格を証明する各種証明書の発行や、外国人従業員が何らかのトラブルに巻き込まれた際の保護・支援などでも利用されます。
大使館を利用する場面
領事館と同様、海外に住む外国人を雇用する際のビザ申請で利用するほか、外国人雇用に関する最新情報を収集する場面でも役立つでしょう。また、大使館が主催する文化イベントなどに参加することで、外国人と一緒に働くうえで大切な文化や価値観の違いを学ぶ機会を得られます。
大使館や領事館がある国一覧
日本の外務省は、以下の国や地域に在外公館を設置しています。
アジア地域
- インド
- インドネシア
- カンボジア
- シンガポール
- スリランカ
- タイ
- 大韓民国(韓国)
- 中華人民共和国(中国)
- ネパール
- パキスタン
- バングラデシュ
- 東ティモール
- フィリピン
- ブータン
- ブルネイ
- ベトナム
- マレーシア
- ミャンマー
- モルディブ
- モンゴル
- ラオス
大洋州地域
- オーストラリア
- キリバス
- クック
- サモア
- ソロモン
- ツバル
- トンガ
- ナウル
- ニウエ
- ニュージーランド
- バヌアツ
- パプアニューギニア
- パラオ
- フィジー
- マーシャル
- ミクロネシア
北米地域
- アメリカ合衆国
- カナダ
中南米地域
- アルゼンチン
- アンティグア・バーブーダ
- ウルグアイ
- エクアドル
- エルサルバドル
- ガイアナ
- キューバ
- グアテマラ
- グレナダ
- コスタリカ
- コロンビア
- ジャマイカ
- スリナム
- セントクリストファー・ネービス
- セントビンセント
- セントルシア
- チリ
- ドミニカ
- ドミニカ共和国
- トリニダード・トバゴ
- ニカラグア
- ハイチ
- パナマ
- バハマ
- パラグアイ
- バルバドス
- ブラジル
- ベネズエラ
- ベリーズ
- ペルー
- ボリビア
- ホンジュラス
- メキシコ
欧州地域
- アイスランド
- アイルランド
- アゼルバイジャン
- アルバニア
- アルメニア
- アンドラ
- イタリア
- ウクライナ
- ウズベキスタン
- 英国
- エストニア
- オーストリア
- オランダ
- カザフスタン
- 北マケドニア
- キプロス
- ギリシャ
- キルギス
- クロアチア
- コソボ
- サンマリノ
- ジョージア
- スイス
- スウェーデン
- スペイン
- スロバキア
- スロベニア
- セルビア
- タジキスタン
- チェコ
- デンマーク
- ドイツ
- トルクメニスタン
- ノルウェー
- バチカン
- ハンガリー
- フィンランド
- フランス
- ブルガリア
- ベラルーシ
- ベルギー
- ポーランド
- ボスニア・ヘルツェゴビナ
- ポルトガル
- マルタ
- モナコ
- モルドバ
- モンテネグロ
- ラトビア
- リトアニア
- リヒテンシュタイン
- ルーマニア
- ルクセンブルク
- ロシア
中東地域
- アフガニスタン
- アラブ首長国連邦
- イエメン
- イスラエル
- イラク
- イラン
- オマーン
- カタール
- クウェート
- サウジアラビア
- シリア
- トルコ
- バーレーン
- ヨルダン
- レバノン
アフリカ地域
- アルジェリア
- アンゴラ
- ウガンダ
- エジプト
- エスワティニ
- エチオピア
- エリトリア
- ガーナ
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- ガボン
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- ギニア
- ギニアビサウ
- ケニア
- コ-トジボワール
- コモロ
- コンゴ共和国
- コンゴ民主共和国
- サントメ・プリンシペ
- ザンビア
- シエラレオネ
- ジブチ
- ジンバブエ
- スーダン
- セーシェル
- 赤道ギニア
- セネガル
- ソマリア
- タンザニア
- チャド
- 中央アフリカ
- チュニジア
- トーゴ
- ナイジェリア
- ナミビア
- ニジェール
- ブルキナファソ
- ブルンジ
- ベナン
- ボツワナ
- マダガスカル
- マラウイ
- マリ
- 南アフリカ共和国
- 南スーダン
- モーリシャス
- モーリタニア
- モザンビーク
- モロッコ
- リビア
- リベリア
- ルワンダ
- レソト
参照元:外務省「在外公館リスト」
まとめ
領事館と大使館は、担っている役割や行う業務に違いがあります。領事館は自国民を保護する職務がメインなのに対し、大使館は外交や政治問題への対応も行う機関です。外国人雇用の場合はビザ(査証)の発給で利用するので、役割やそれぞれの違いを理解しておきましょう。