フィリピン人の採用には独自のルールがあると知り、不安や疑問を抱いている採用責任者の方もいるでしょう。フィリピン人の直接雇用は原則禁止です。そのため、DMW(旧:POEA)への登録や複数機関による審査・手続きが必要になります。

一見すると複雑そうですが、手順を一つひとつ確認していけば、理解するのはそこまで難しくないでしょう。

この記事では、フィリピン人採用で注意すべきポイントについて紹介します。DMWを含む3つの重要機関や直接雇用禁止の免除申請についても解説。必要な手続きを怠るとリスクが生じるため、フィリピン人採用のルールや流れを知り、実際の雇用時にお役立てください。

フィリピン人の直接雇用は原則禁止されている

フィリピン人の採用では、他国籍の外国人と異なり企業による直接雇用が原則禁止されています。これは、海外で就労する自国民が多いフィリピン政府による、現地での労働搾取やトラブル、人身売買などを未然に防ぐための措置です。

日本の企業がフィリピン人を採用したい場合、フィリピン政府から認定を受けた送り出し機関を必ず通さなければなりません。現地採用はもちろん、すでに日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も同様です。

ただし、専門職や管理職などではフィリピン政府が個別に認めた場合に限り、送り出し機関を通さずに採用できることもあります。直接雇用を希望する場合は、後述の「直接雇用禁止は免除申請できる場合も」で紹介する免除申請が必要です。

外国人の採用に慣れておらず、通常の在留資格関係の手続きに手一杯の担当者の方もいるかもしれません。しかし、必要なプロセスを踏まないと後々トラブルになる恐れがあるので、フィリピン独自のルールも必ず守りましょう。

フィリピン人の採用に関連する3つの重要機関

ここでは、フィリピン人の採用に関連する3つの重要機関について解説します。それぞれの機関の特徴や役割などについて把握しておきましょう。

DMW(旧:POEA)

DMWとは「Department of Migrant Workers」の略称で、フィリピン移住労働者省を指します。日本の厚生労働省に相当する機関であり、海外で働くフィリピン人の権利や労働環境を守るのが役割です。かつては「POEA(フィリピン海外雇用庁)」がその業務を担っていましたが、2022年の組織改編によってDMWに統合されました。

日本企業がフィリピン人を雇用するためには、DMWに企業登録を行わなければなりません。フィリピン政府が定める雇用契約の基準や労働者の権利保護が認められたら、フィリピン人に対して海外雇用許可証である「OEC(Overseas Employment Certificate)」が発行されます。

OECが発行されないとフィリピン人は就労目的で出国できないため、企業は必ず手続きを行いましょう。

詳しい採用方法は「フィリピン人採用時の手続きのルール」の項目で後述するので、あわせてご覧ください。

MWO(旧:POLO)

MWO(旧:POLO)とは「Migrant Workers Office」の略称で、フィリピンの移住労働者事務所のことです。DMWの海外出先機関に当たるため、世界各地に拠点があります。日本の場合は、東京の駐日フィリピン共和国大使館内と、大阪の在大阪フィリピン共和国総領事内の2ヶ所です。

MWOでは、雇用契約を監督し労働条件が適切かどうか確認したり、フィリピン人と企業間で起きたトラブルを解決するためのサポートを行ったりしています。

日本企業がフィリピン人を雇用するには、まずMWOの書類審査や面接を通過しなければなりません。MWOでの書類審査・面接に合格後、DMWに事業所情報が登録されれば、フィリピン人の受け入れが可能です。

MWO東京・大阪の管轄区域

MWO東京とMWO大阪のどちらで手続きを行うかは、フィリピン人が実際に就労を行う場所で決まります。MWOへの書類提出の際は、職場の所在地がどちらの管轄に含まれるかを確認しましょう。

【MWO東京の管轄区域】

北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、静岡県、山梨県

【MWO大阪の管轄区域】

富山県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、岡山県、鳥取県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

DOLE

DOLEとは「Department of Labor and Employment」の略称で、フィリピン労働雇用省のことです。フィリピンにおける労働・雇用に関する規制や支援策の策定、監督などを行います。特に、海外企業とフィリピン人のあいだで起こる労働上のトラブルには厳正に対処しており、フィリピン人労働者が不当な条件や劣悪な環境のもと働いていないかなどを管理するのが役割です。

MWO(旧:POLO)申請は厳しく審査される

フィリピン人労働者を保護する観点から、MWO申請は厳しく審査される傾向があります。フィリピン人雇用に適切な企業であることを示せるよう、書類選考や面接はしっかり事前準備のうえ臨みましょう。

面接で質問される内容は、フィリピン人を雇用する目的や労働条件などについてです。英語で受け答えをしますが、その際通訳者を用意しても問題ありません。ただし、弁護士や人材会社の社員などが同席することは禁止されています。

結果通知までにかかる期間

企業規模や本人の経歴、混雑状況にもよりますが、MWOの申請から結果通知までは1~3ヶ月程度かかるのが一般的なようです

また、ほとんどのケースで「補正要求(追加書類)」が発生します。補正要求の期間中は審査がストップしてしまうので、要請があった場合は速やかに対応するようにしましょう。

MWOの審査でよくある補正要求

MWOの審査でよくある補正要求は、下記のとおりです。

  • 本人の仕事内容について、詳細に説明してください。図表や写真を使用していただいても構いません。
  • 本人の見込年収の根拠について、合理的に説明してください。当機関(MWO)で把握している業界相場と比較して少し低いように見受けられますので、納得のいく説明をお願いします。
  • 貴社の仕事をするうえで日本語はどの程度必要なのかについて説明してください。

このように、在留資格の審査とは少し違った観点で審査されます。少し高圧的に感じられるかもしれませんが、事実に即した真摯な対応が大切です。

直接雇用禁止は免除申請できる場合も

先述のとおり、フィリピン人の直接雇用は原則禁止されているため、認定された送り出し機関を利用しなければなりません。ただし、「直接雇用禁止の免除申請」を行えば、例外的に直接フィリピン人を雇用できる場合があります

免除申請が許可される条件は以下のとおりです。

  • 管理職や教授といった、専門性または高度なスキルが必要な職種や職位である
  • 給与や福利厚生、手当などがDMWが要求する最低基準以上である
  • 雇用する人材は大卒以上で、仕事に関する十分な知識や業務経験があり、優れた資格をもっている

ただし、条件に該当するかどうかはDMWの判断によるところが大きく、必ずしも直接雇用できるとは限りません。また、直接雇用禁止の免除はあくまで特例措置のため、申請が承認されるのは簡単ではないといわれています。

特別な事情がない限り、送り出し機関を利用したほうがスムーズに手続きが進む可能性が高いでしょう。

免除申請の流れ

フィリピンに在住するフィリピン人の「直接雇用禁止の免除申請」は、以下のように手続きを行います。

  1. 必要書類をMWOに提出し、審査を受ける
  2. 書類審査に合格後、DMWの担当官による面接を受ける
  3. フィリピン人の在留資格認定証明書交付申請を行う
  4. 交付された認定証明書のコピーをMWOに送る
  5. MWOから書類が送られてくる
  6. フィリピン人に在留資格認定証明書と5の書類を送付する
  7. フィリピン人が在留資格認定証明書を使ってビザ(査証)を取得する
  8. フィリピン人がビザのコピーと5の書類をDMWに提出する
  9. DMWがOECを発行する

一見すると、それほど手続きが複雑化した印象はないかもしれません。しかし、実際には審査基準が厳格になっており、申請しても承認をもらえないケースが多いようです。

フィリピン人の採用で手続きを怠るとリスクが生じる

企業側が手続きを怠ると、フィリピンに在住しているフィリピン人はOEC(海外雇用許可証)が取得できず、出国が許可されません。そのため、予定していた人員をスケジュール通りに雇用できない事態になるでしょう。

日本に住んでいるフィリピン人を雇用する場合も注意が必要です。企業の手続きが不十分だと、フィリピン人が一時帰国した際にOECを取得できず、日本を出国することはできても、就労目的では日本に戻れなくなります。フィリピン人も不利益を被るほか、企業も人材を失う可能性があり業務に支障をきたすでしょう。

手続きの内容や手順について網羅的に把握・準備し、このような事態を未然に防ぐことが大切です。

なお、日本の職業紹介事業者がMWO申請に関与することは許可されていません。しかし、外国人雇用の現状について情報収集をしたい場合や、在留資格についてご相談を希望される場合は弊社で対応可能です。ご興味のある担当者の方は、外国人特化の人材紹介サービス「Leverages Global」にお気軽にお問い合わせください

フィリピン人採用時の手続きのルール

ここでは、フィリピン人採用時の手続きのルールについて解説します。複雑に感じられる担当者の方もいるかもしれませんが、順を追って確認していけば、理解するのはそこまで難しくないでしょう。

母国に在住するフィリピン人の場合

以下は、母国に在住するフィリピン人を採用し、日本に招へいするまでの大まかな流れです。フィリピン人が在留資格「特定技能」を取得するケースを例に挙げて紹介します。

  1. フィリピン政府が認定した送り出し機関を選定し、募集取り決めを締結する
  2. MWOに必要書類を提出し代表者が面接を受ける
  3. 書類審査と面接を通過すると、MWOから許可書類が送付される
  4. 3の許可書類を送り出し機関経由でDMWに提出する
  5. 企業がDMWに登録される
  6. 送り出し機関が人材を募集し、企業は紹介を受けて雇用する人材を決定する
  7. 企業の担当者が地方出入国在留管理局で在留資格認定証明書交付申請を行う
  8. 在留資格認定証明書が交付されたら、原本をフィリピン人へ送る
  9. フィリピン人が在留資格認定証明書を用いて日本国大使館・領事館でビザ(査証)を取得する
  10. フィリピン人が出国前オリエンテーションと健康診断を受ける
  11. フィリピン人が送り出し機関を通じてDMWにOECの発行申請を行う
  12. フィリピン出国時にOECを提示して来日する

このように、送り出し機関およびフィリピン人との連携が非常に重要です。言葉の壁が心配な場合は通訳を介しながら手続きを進めましょう。

日本に在住するフィリピン人の場合

日本に在住するフィリピン人を雇用する場合も、手続きの流れは上記1~6と同様です。その後、必要に応じて本人が在留資格変更許可申請を行います。

なお、日本に在住するフィリピン人を雇用する場合、本人が永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった身分系の在留資格を保有していれば、MWO申請は必要ありません

一方、就労に関する在留資格の場合は申請が必要です。自社の職種・業務に応じた在留資格変更許可申請のほか、企業もMWO申請を行いましょう。

なお、近年、日本に在住するフィリピン人の採用に関しては、ルールがたびたび変更になっています。正確な情報については、その都度MWO東京もしくはMWO大阪に確認するようにしましょう。

参照元:出入国在留管理庁「フィリピンに関する情報

まとめ

日本企業がフィリピン人を採用する際は、DMWやMWO、送り出し機関など複数の機関で手続きを行う必要があります。DMWへの企業登録は、国内外問わずフィリピン人の採用では不可欠です。そのためのMWO申請を怠るとフィリピン人が出国できなくなるため、迅速に手続きを行いましょう。ほかの外国人雇用に比べて時間がかかる可能性があるため、早めの申請準備をおすすめします。