「就労ビザで働く外国人が退職したらどうなる?」と気になっている方も多いでしょう。外国人が日本で働くために必要な就労ビザですが、その性質から「退職したらすぐ取り消しになる」と思っている方もいるようです。実際は、退職後もしばらくは就労ビザで日本に在留でき、就職活動や帰国準備などを行えます。

この記事では、外国人が退職したあとの就労ビザの扱いについて解説。雇用する外国人が退職した際の企業側・本人側が行うべき手続きも紹介します。退職を申し出られたときに慌てないで済むよう、注意点も含めて事前に内容を把握しておきましょう。

就労ビザをもつ外国人が退職する際の企業側の手続き

雇用する外国人が退職する際、企業は以下の手続きを行う必要があります。

  • 退職証明書を作成する
  • ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する
  • 各種社会保険の手続きをする

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

退職証明書を作成する

外国人から申し出があった場合、退職後速やかに「退職証明書」を発行します。退職証明書は、労働者が転職先から提示を求められたときや、すぐに国民年金・国民健康保険の加入手続きをしなければならないときに必要となる書類です。

本来、退職証明書は労働者からの依頼を受けて発行します。しかし、外国人の場合は、退職時やその後に自分にどの書類が必要か把握していない可能性もあるでしょう。「辞めたらもう関係ない」と突き放すのではなく、退職後も外国人がスムーズな手続きを行えるようできる限りのサポートをするのが大切です。

ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する

外国人が退職したら、決められた期日までにハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出します外国人雇用状況の届出は、外国人の雇入れおよび離職時に提出が義務付けられている書類です。提出期限は、労働者の雇用保険の加入有無で以下のように異なります。

【提出期限】

  • 雇用保険被保険者:雇用保険被保険者でなくなった日の翌日から10日以内
  • 雇用保険被保険者以外:離職日の翌月末日まで

なお、外国人が雇用保険に加入している場合は「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)」の提出をもって外国人雇用状況の届出が完了です。該当書類の14~19欄が外国人に関する情報を書く場所なので、必要事項を忘れずに記載しましょう。

外国人が雇用保険に加入していない場合は「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を提出します。

各種社会保険の手続きをする

健康保険・厚生年金保険といった各種社会保険の手続きに関しては、日本人の従業員が退職したときと同様です。退職から5日以内に、企業を管轄する年金事務所へ「被保険者資格喪失届」を提出します。

参照元:
厚生労働省「外国人雇用状況の届出について
日本年金機構「外国人従業員を雇用したときの手続き

就労ビザをもつ外国人本人が退職する際に行うべき手続き

企業としては、外国人本人が行うべき手続きについても把握しておくのが望ましいでしょう。

退職した外国人は、まず日本で所属する場所が変わったことを届け出る「所属(活動)機関に関する届出」が必要です。離職・再就職してからそれぞれ14日以内に、住居地を管轄する地方出入国在留管理局へ提出します。窓口や郵送のほか、電子申請システムでの提出も可能です。

その後の手続きは「転職する」「転職しない」「帰国する」でそれぞれ異なります。以下で、状況別の動きを見ていきましょう。

転職する際の手続き

国内で転職する際は、「就労ビザの変更なしで働き続けられるケース」と「就労ビザの変更が必要なケース」に分かれます。

就労ビザの変更なしで働き続けられるケース

転職先の業務内容が保有している就労ビザで認められている範囲内の仕事の場合、ビザの変更なしで働き続けることが可能です。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザをもつ外国人が、IT企業のエンジニア職から同業他社の同職種へと転職するケースなどが該当します。

なお、働けるのはすでに定められた在留期限までのため、必要に応じて早めに「在留期間更新許可申請」を促しておくと親切でしょう。

関連記事:「在留カード(在留期間)更新はいつ行う?企業が把握すべき必要書類や注意点

就労ビザの変更が必要なケース

一方、転職先の業務内容が保有している就労ビザでは認められていない仕事の場合、ビザの変更が必要です

多くの就労ビザは、従事できる仕事の種類や業務の範囲が決まっています。しかし、下記のように外国人が前職とは異なる職種に就くケースでは「在留資格変更許可申請」で就労ビザを変更しなければなりません

  • 管理系職種から現業系職種への変更(技人国ビザ→特定技能ビザ)
  • 外国料理の調理師から管理系職種への変更(技能ビザ→技人国ビザ)

ただし、在留資格変更許可申請の許可を得るためには、就労ビザに応じてこれまでの学歴や職歴、労働条件の適正性などが審査されます。外国人の場合、前職と関連のない異業種への転職はハードルが高くなるといえるでしょう。

就労せずに日本に留まる際の手続き

就労ビザをもった外国人が退職後、就労せずに日本に滞在する場合も在留資格変更許可申請を行います

たとえば、日本の専門学校や大学へ通うために「留学ビザ」に変更したり、日本人と結婚して「日本人の配偶者等ビザ」に変更したりするケースです。引き続き日本に留まるためには、その後の自分の活動に合わせた資格変更手続きを行う必要があります

母国に帰国する際の手続き

外国人が退職して母国に帰国する場合、就労ビザに関する特別な手続きはありません。在留期限までに出国できるよう準備したら、出国の際に空港で入国審査官に在留カードを返納するという流れです。

なお、居住地の役所宛に住民票の転出届を提出したり、マイナンバーカードを返却したりといった作業は発生します。外国人が分からず困っていたら、可能な範囲で手助けをしてあげましょう。

参照元:
出入国在留管理庁「所属(契約)機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能)
出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A
出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請

就労ビザは退職後すぐに取り消しになるわけではない

就労ビザは退職してもすぐに失効するわけではありません

就労ビザは、日本で仕事をする外国人に付与されます。そのため、「外国人は仕事を辞めたらすぐに母国に帰らなくてはいけない」と思っている人も多いようです。

実際のところ、退職後も在留資格の期限が残っていれば一定期間日本での在留が許可されています。母国に帰る予定のない外国人は、その間に求職活動をすることが可能です。

再就職に向けた活動をせず3ヶ月以上経過すると取消対象に

前述したとおり、外国人の就労ビザは退職後すぐに取り消しにはなりません。しかし、ほかの会社への転職や積極的な求職活動をしないまま3ヶ月経つと、就労ビザは取り消し対象となります

理由は、入管法第22条の4の在留資格取り消し理由の一つに、以下の文言があるためです。

入管法別表第1の上欄の在留資格(注)をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合(ただし、当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます。)。

(注)入管法別表第1の上欄の在留資格
「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「特定技能」、「技能実習」、「文化活動」、「短期滞在」、「留学」、「研修」、「家族滞在」、「特定活動」

参照元:出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)

身分に基づく在留資格以外は、在留期限が十分に残っていても3ヶ月以上何もしていない場合は取り消し対象となり、原則として母国に帰国しなくてはなりません。

なお、活動を行わないで在留する正当な理由がある外国人は、就労ビザ取り消しの対象外です。正当な理由に該当するかは一人ひとりの事情を個別に考慮し判断されます。

会社都合退職では就労ビザの取消条件が緩和される

外国人が会社都合で解雇や雇い止めにあった場合、離職後に継続的な就職活動を行っても在留期限までに転職先が見つからない可能性もあるでしょう。このようなやむを得ない事情では、ビザを「特定活動」に変更することでさらに6ヶ月間の在留とアルバイトが許可されます

外国人が当該手続きを行うためには、会社都合で解雇されたことを証明しなければなりません。本人の将来にも関わるので、もし会社都合で従業員を解雇・雇い止めした場合は、必要な書類は速やかに発行し渡すようにしましょう。

参照元:
出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)
出入国在留管理庁「やむを得ない事情により活動継続が困難な場合(『特定活動』(就労継続支援))

特定技能外国人や技能実習生が退職する際の就労ビザは?

特定技能1号」や「技能実習」のビザで働く外国人がその期間を過ぎたあとも日本で働くためには、就労ビザを変更しなくてはなりません

「特定技能1号」のビザをもつ外国人は「特定技能2号」やほかの就労ビザへ、技能実習生は2号または3号を満了して「特定技能1号」へ移行するルートがあります。いずれにしても、就労ビザの変更には企業の協力が必要不可欠です。外国人が継続して自社で働きたい意思を示したら、スムーズに手続きを終えられるようサポートしましょう。

就労ビザをもつ外国人が退職する際の企業側の注意点

ここからは、就労ビザをもつ外国人が退職する際の企業側の注意点を紹介します。

届出を忘れずに行う

外国人の退職時には、各種届出を忘れずに行いましょう。前述した外国人雇用状況の届出や雇用保険、社会保険などの手続きにはそれぞれ期限が設けられています。違反すると罰則の対象になる可能性だけでなく、外国人本人のその後の活動にも影響が出るため、必要な手続きは迅速に対応しましょう。

在留資格に関する留意事項を伝えておく

外国人が退職する際は、転職したり働かずに滞在したりする場合の在留資格の留意事項について伝えておくことが重要です。現在の就労ビザのまま転職できるのか、働かずに滞在するための在留資格を得るための条件・審査はどのようなものかなど、個人の状況に合わせた案内をしてあげましょう。

貸与物の返還や税金等の未払いをサポートする

業務上貸与していたものの返還や公共料金の解約、住居の退去など、退職に付随する諸手続きは企業側からも確認・サポートするのが望ましいです。母国に帰国する場合は、銀行口座の解約や税金等の未払いがないかをチェックし、トラブルを未然に防ぎましょう。

また、外国人労働者の帰国では、これまで納付した年金の一部が返金される制度である「脱退一時金」の申請を行うこともできます。この制度についてあらかじめ外国人に案内しておくと親切です。

外国人が退職した際の就労ビザに関するFAQ

ここでは、外国人が退職した際の就労ビザに関してよくある質問に回答していきます。

退職後一時帰国した場合は再入国時の就労ビザはどうなる?

退職後一時帰国しすぐ戻ってくる場合、就労ビザは取り消しになりません。出国時の空港にて1年以内に再入国する「みなし再入国許可」の申請を行えば、再入国許可の申請は不要です。

ただし、失業状態のまま3ヶ月以上海外にいると在留資格取り消しの対象になります。転職先を決めてから入職までの間に一時帰国するのが望ましいでしょう。

就労ビザをもつ外国人は退職後にアルバイトとして働ける?

就労ビザで働いていた外国人が自己都合で退職した場合、原則としてアルバイトは認められていません。就労ビザは、フルタイム勤務での雇用が定められている在留資格です。そのため、短時間勤務で契約するアルバイトやパートでは活動できません。

なお、会社都合での解雇や雇い止めにあった外国人は、「資格外活動許可」を申請すればアルバイトしつつ就職活動をすることが許可されます。

退職後に就労ビザを延長できる?

自己都合での退職後すぐに就労ビザの期限が切れる場合、延長は基本的に不可です。なお、やむを得ない事情がある方は「短期滞在ビザ」へ変更申請をすれば、就職活動のために90日以内の在留が認められる可能性があります。

参照元:出入国在留管理庁「みなし再入国許可(入管法第26条の2)

まとめ

就労ビザは退職後すぐに失効にはなりません。退職後の就職活動やその後の生活に余計な不安が生じないよう、外国人が退職する前に手続きと就労ビザの基本、入管法上のルールをしっかり説明できると親切でしょう。

また、退職した外国人から何年も経ったあとに「源泉徴収票」や「在職期間の証明書」を発行してほしいと連絡が来ることもあります。これらの書類が永住者ビザの審査に必要な場合があるためです。採用責任者の方はこういった点にも留意し、退職予定または退職した外国人労働者へのサポートを行いましょう。

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