「特定技能『介護』で外国人を受け入れるには?」とお悩みの方もいるでしょう。特定技能外国人は、一定水準以上の介護知識と日本語能力を有している人材で、その割合は年々増加しています。定められた要件を適切にクリアすれば、ほかの在留資格と比べても即戦力として雇用しやすいでしょう。
この記事では、特定技能「介護」で雇用するための企業側の要件と方法を解説します。行える業務内容や外国人本人の申請要件も紹介。特定技能外国人を雇用するメリットや受け入れる際の注意点、ほかの在留資格との違いについてもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
実際に特定技能「介護」での雇用事例が気になる方は、こちらの雇用事例インタビューも合わせてご確認下さい。
特定技能「介護」とは
特定技能は、人材不足の業界で外国人雇用を促進するために2019年に創設された制度および在留資格です。雇用対象となるのは生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にあると認められた「特定産業分野」のみで、2026年1月時点で定められている16分野のなかに「介護」が含まれています。
介護は特定産業分野のなかでも2番目に受け入れが多く、出入国在留管理庁の公表によると、特定技能「介護」の在留資格をもつ外国人は2025年6月末時点で5万4,916人でした。今後もさらに増加が見込まれており、外国人介護士を雇用する際の主軸の制度になると予想されています。
特定技能「介護」で行える業務内容
特定技能「介護」の在留資格をもつ外国人が行える主な業務は、身体介護および支援業務です。また、雇用後すぐに人員配置の人数の対象になるうえ、夜勤も行えます。
身体介護では食事介助や入浴介助、排せつ介助といった業務全般に加えて、付随するレクリエーションの実施やリハビリテーションの補助などにも従事可能です。同じ仕事をする日本人が通常行うであろう関連業務も、メインの業務に伴うかたちであれば行えます。具体的には、掲示物の管理や物品の補充などが当てはまりますが、これらの関連業務のみを行うことは許可されていません。
また、雇用直後から1人で夜勤対応が可能なため、人手不足に悩む施設では重要な即戦力となります。しかし、実際は入職後すぐに夜勤の独り立ちをするのは難しい場合もあるため、しっかりと教育を行い、環境を整えるのが望ましいでしょう。
2025年4月から訪問系サービスへの従事も可能に
2025年4月21日から、特定技能「介護」の在留資格をもつ外国人が訪問系のサービスに従事できるようになりました。介護業界の人手不足は、特に訪問介護の現場で顕著になっています。従事するためには複数の要件を満たさなければなりませんが、ますます高齢化が進む日本において、訪問系サービスを行える特定技能外国人は貴重な人材といえるでしょう。
参照元:
出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)」
出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」
出入国在留管理庁「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
企業が特定技能「介護」人材を受け入れるための要件
受け入れ対象の施設は以下の条件を満たせば、特定技能外国人を雇用できます。
- 諸申請を行う前に、厚労省が組織する「介護分野における特定技能協議会」の構成員となり、当該外国人材の受け入れ事業所情報が登録された入会証明書の発行を受けること
- 特定技能協議会に対して必要な協力を行うこと
- 厚生労働省が行う調査または指導に対し必要な協力を行うこと
- 外国人と適切な雇用契約を結び、確実に履行すること
- 過去5年以内に出入国・労働法令違反がないなど、適切な機関として認められること
- 外国人を支援する計画が適切であること
- 外国人を支援する体制があり、確実に実施すること
- 出入国在留管理庁への届出を適切に行うこと
支援計画のもと行う支援は「出入国時の送迎」「生活オリエンテーション」「日本人との交流促進」など多岐にわたります。一見すると難しそうに思えますが、定められたルールに沿って雇用すればクリアしやすい要件といえるでしょう。
なお、特定技能「介護」をもつ外国人を雇用するには以下に該当する必要があります。
引用元:厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」
支援計画の作成・実施については、弊社が運営する「Leverages Global」をはじめとした登録支援機関へ委託することも可能です。自社で支援を行うのが難しい場合は、サポートを依頼するのも一つの選択肢でしょう。
参照元:
厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
出入国在留管理庁「特定技能制度」
出入国在留管理庁「特定技能運用要領」
特定技能「介護」の申請要件
外国人本人が特定技能「介護」の在留資格を得るには、日本語および技能を測る試験の両方に合格する、もしくは技能実習2号から移行する必要があります。また、EPA介護福祉士候補者として4年間の在留期間を満了するのも取得方法です。
以下で、それぞれの申請要件について見ていきましょう。
介護技能評価試験と日本語試験に合格する
介護技能評価試験と日本語試験に合格すると、特定技能「介護」の在留資格を申請できます。
介護技能評価試験は「介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるか」を測る試験です。これは技能実習2号修了に相当するレベルのため、当該試験の合格者は、3年間施設や事業所で実務経験を積んだ技能実習生と同等の知識・スキルを有していることになります。試験の種類は、学科試験および写真などを見ながら正しい判断や判別ができるかを確認する実技試験の2種類です。
介護の技能とあわせて、「国際交流基金日本語基礎テスト」で合格点を得る、もしくは「日本語能力試験」のN4レベル以上を取得することも欠かせません。いずれの試験も、問われるのは基本的な日本語を理解できる能力です。
ただし、介護分野の場合は「介護日本語評価試験」の合格も求められます。介護日本語評価試験で測られるのは「介護現場で介護業務に従事するうえで支障のない程度の日本語能力」です。試験問題は「介護のことば」「介護の会話・声かけ」「介護の文書」から構成されています。
技能実習2号から移行する
2つ目は、介護分野の技能実習2号から移行する方法です。3年間の技能実習2号を優良に修了し、技能実習の職種と特定技能1号の分野に関連性が認められれば移行できます。この場合、日本語と介護技能評価の試験は免除されるのが特徴です。
すでに技能実習2号の外国人を雇用している場合は、特定技能外国人として新たな雇用契約を締結したあと、支援計画を策定します。地方出入国在留管理局で在留資格変更許可申請を行い、在留資格を「特定技能」に変更できたら引き続き働いてもらうことが可能です。
なお、技能実習生を受け入れるときに契約した監理団体が、特定技能の登録支援機関としての業務を行っている場合も。このケースでは、新たに登録支援機関を探して契約する必要がありません。将来的なことも見据え、技能実習の監理団体を選ぶときは登録支援業務も行っているところを選ぶのがおすすめです。
EPA介護福祉士候補者として4年間就労する
在留資格「特定活動」で在留しているEPA介護福祉士候補者は、4年間のうちに介護福祉士の国家資格に合格することを前提に付与されます。合格すればより永続的な在留資格「介護」に移行できたり、「EPA介護福祉士」として特定活動のまま引き続き就労できたりしますが、不合格の場合はほかの在留資格に変更するか、母国に帰らなくてはなりません。
その際に、EPA介護福祉士候補者は「EPA介護福祉士候補者として4年間にわたり就労・研修に適切に従事している」「直近の介護福祉士国家試験で合格基準点の5割以上を得点しすべての科目で得点を得ている」ということを証明すれば、試験免除で在留資格を「特定技能」に変更できます。
在留資格変更後の流れは、技能実習からの移行とおおむね同じです。特定技能に移行後も在留期間内に介護福祉士国家試験に合格すれば、在留資格「介護」に変更できます。
参照元:
厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
国際交流基金日本語基礎テスト「JFT-Basicとは」
日本語能力試験公式ウェブサイト「日本語能力試験とは」
出入国在留管理庁「在留資格『特定活動』(EPA看護師、EPA介護福祉士及びそれらの候補者)」
特定技能外国人を介護施設で雇用するメリット
特定技能外国人を雇用する施設が増えたのは、主に以下のようなメリットがあるからです。
- 配属後すぐに人員配置基準に加えられる
- 一定水準の技能や日本語能力を習得済み
- 幅広い業務を任せられる
- 1人体制での夜勤が可能
- 人材不足を解消できる
- ほかの在留資格よりも比較的受け入れやすい
- 在留資格を移行すれば長く働いてもらえる
それぞれ詳しく解説するので、外国人雇用を検討している企業の方は参考にしてみてください。
配属後すぐに人員配置基準に加えられる
先述したように、特定技能「介護」の外国人は配属後すぐに人員配置基準に加えられます。同じく介護職に就ける「技能実習」の場合、配属後6ヶ月間は人員配置基準に加えられないほか、原則として1年経過しなければ訪問系サービスに従事できません。
慢性的な人手不足に悩む施設においては、すぐに現場の即戦力に組み込める特定技能「介護」の人材は魅力的といえるでしょう。
一定水準の技能や日本語能力を習得済み
特定技能外国人は、技能試験と日本語試験の両方に合格している人材です。さらに、介護分野の場合は、介護の現場で使われる日本語の評価試験にも合格しています。そのため、実務経験がない人にもある程度の基礎知識が備わっているのがメリットです。
日本語でのコミュニケーションも取りやすいので、初めて外国人を雇用する施設でも安心でしょう。
幅広い業務を任せられる
単純労働を含めた幅広い業務を任せられるのもメリットの一つです。
たとえば、在留資格「技能実習」では掲示物の管理や物品の補充など、主たる業務に付随した関連業務ができるのは、業務時間全体の3分の1以下と定められています。
一方、在留資格「特定技能」の場合、このような単純労働をメインで行わせることは禁止されているものの、そこまで厳格な時間の制限はありません。
2025年には訪問系サービスへの従事も解禁されたため、より多くの業務を任せられるのが魅力といえるでしょう。
1人体制での夜勤が可能
先述したように、特定技能「介護」の外国人は雇用直後から1人で夜勤対応が可能です。よく比較対象になる「技能実習」では、「日本人介護士と複数人で行う」や「2年目以降から行う」などの条件付きで夜勤が許可されています。
特定技能外国人の場合、本人の希望や状況などが整っていればすぐに単独で夜勤に従事できるため、1年目から即戦力としての活躍が期待できるでしょう。
人材不足を解消できる
特定技能外国人の雇用は安定的な人材確保の可能性が高まり、人手不足の解消にプラスの効果をもたらします。出入国在留管理庁の公表によると、2025年6月末時点で日本に在留している特定技能外国人は33万6,196人でした。前年同月の25万1,747人からは8万4,449人も増加しています。
引用元:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年6月末)」
2019年に制度がスタートしてすぐは、新型コロナウイルスの影響により受け入れ人数が伸び悩みました。しかし、2022年以降は順調に数値を伸ばしており、政府も多くの予算を投じて受け入れを促進するなど、今後さらに人数は増えていくでしょう。
ほかの在留資格よりも比較的受け入れやすい
特定技能外国人は、ほかの在留資格をもつ外国人と比べると受け入れやすい人材といえます。
在留資格「介護」をもつ外国人は、在留期間の更新に制限がないうえ夜勤や訪問系サービスにも従事可能です。しかし、母数が少なく採用の競争率が高いというマイナス面があります。
在留資格「技能実習」や「特定活動(EPA介護福祉士やEPA介護福祉士候補者)」は、雇用時に特定の団体を通す必要があったり各種報告事項や手続きが多かったりと、雇用管理に工数が掛かる点がネックといえるでしょう。
一方、在留資格「特定技能」をもつ外国人は順調に母数が増えており、企業による直接雇用も可能なため、ほかの在留資格と比較すると採用のハードルは低めです。制度については「雇用中に支援計画を適切に実施する」という決まりがありますが、登録支援機関に委託することで負担を最小限に減らせるでしょう。
在留資格を移行すれば長く働いてもらえる
在留資格「特定技能1号」には、最長で5年という在留期間が設けられています。しかし、5年間のうちに実務経験ルートで介護福祉士の国家資格を取得し在留資格を「介護」に変更すれば、引き続き日本で働いてもらうことが可能です。
実務経験ルートでは日本人と同じ条件と流れで試験に臨みますが、働きながら実務者研修のカリキュラムを修了し国家試験に合格するためには、施設側のサポートが欠かせません。
特定技能外国人が在留資格「介護」を取得することは、施設側にも「長く働いてもらえる」「業務の制限がなくなる」など多くのメリットがあります。現場の外国人が介護福祉士を目指す場合は、シフトの組み方を考慮し学習支援を行うなど国家試験に合格できるよう最大限協力しましょう。
参照元:
出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
出入国在留管理庁「特定技能制度」
特定技能「介護」をもつ外国人の雇用方法
特定技能「介護」をもつ外国人を雇用するには、以下の3つの方法があります。それぞれ確認のうえ、自社に相応しい雇用方法を選びましょう。
海外から募集する
1つ目は、海外で技能と日本語の試験に合格し、在留資格「特定技能」を得る条件を満たした外国人を募集する方法です。外国人が求人を見て直接応募してくるケースもありますが、人材紹介会社を利用するとよりスムーズに採用が進むでしょう。
雇用したい外国人が決まったら雇用契約を締結します。その後、海外にいる外国人の代わりに、施設の担当者が地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請」をするのが一般的な流れです。
申請時には各種書類のほか支援計画書も提出する必要があるため、支援計画の実施を登録支援機関に委託する場合は依頼先をあらかじめ選んでおき、契約を交わしたうえで作成しましょう。
在留資格認定証明書が交付されたら、郵送または電子メール(PDF)で本人へ送付します。外国人が在留資格認定証明書を用いて現地の日本国大使館・総領事館で査証(ビザ)を発給し、日本に入国するというかたちです。
入国後は、受け入れ施設もしくは登録支援機関が行う生活オリエンテーションを受けてもらい、完了したら業務を開始できます。
介護福祉士養成施設に求人を出す
介護福祉士養成施設で学んでいる留学生を対象に求人を出すのも一つの方法です。
介護福祉士養成施設で学んでいる留学生は、介護福祉士の国家資格に合格し、卒業後に在留資格「介護」または「特定技能」の取得を目指している人が多くいます。学校を通しての求人は留学生にとって安心感があるため、応募を集めやすいといえるでしょう。
ただ求人を出すだけでなく、特定技能評価試験の対策講座の講師派遣などを通して、学校側と関係を作ることもできます。また、留学生向けの奨学金制度を用意して、養成施設修了後の採用につなげるという方法も。いずれにせよ学校側の協力が必要であり、入社の強要はできないという点に注意してください。
留学生は在留資格「留学」で日本に在留しているため、雇用時には「在留資格変更許可申請」を行い在留資格を「特定技能」に変更する必要があります。外国人本人が申請するのが基本ですが、施設側が用意すべき書類もあるなど積極的なサポートは欠かせません。
なお、在留資格を変更した場合も、特定技能制度における支援計画の策定および実施は必須です。
中途採用で募集する
すでに特定技能の在留資格を取得し介護士として働いている外国人を、中途で募集することもできます。
技能実習生と違い、特定技能外国人は要件を満たせば自由な転職が可能です。転職を検討している外国人にとって魅力的な研修制度や福利厚生、キャリアアップ制度を用意すれば、経験豊富で即戦力となる人材を確保できるでしょう。
外国人特化の人材採用支援サービス「Leverages Global」では、外国人材一人ひとりと面談を行い、適性を見極めて企業さまへのご紹介を行っています。外国人雇用の知識が豊富なアドバイザーが対応させていただきますので、初めて外国人を受け入れる場合もご安心ください。
また、Leverages Globalを共同運営するレバレジーズオフィスサポート株式会社は、登録支援機関として認定されています。人材紹介だけでなく、雇用後の登録支援業務のサポートも可能です。
こちらからお気軽にお問い合わせください。
参照元:
出入国在留管理庁「受け入れ機関の方」
出入国在留管理庁「手続の種類から探す」
出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』」
特定技能の介護分野に多い国籍
出入国在留管理庁の公表によると、特定技能の在留資格で介護士として働く外国人に多い国籍は以下のとおりでした(2024年12月末速報値)。
- 1位:インドネシア(1万2,242人)
- 2位:ミャンマー(1万1,717人)
- 3位:ベトナム(8,910人)
特筆すべきは、特定技能制度を利用して介護職に就くインドネシア人とミャンマー人の多さです。
厚生労働省の「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」では、2024年10月末時点でのベトナム人労働者数は57万708人と、外国人労働者全体で最多でした。対してインドネシア人は16万9,539人、ミャンマー人は11万4,618で、ベトナム人とのあいだには開きがあります。にも関わらず、特定技能「介護」の在留資格をもつインドネシア人とミャンマー人はベトナム人よりも多い状況です。
考えられる理由として、特に東南アジア諸国は「お年寄りを敬う」「人を助ける」といった価値観を大切にしていることが挙げられるでしょう。福祉や介護に関する職種にポジティブな印象をもっている人が多く、特定産業分野のなかから介護分野が選ばれやすい傾向にあるようです。
参照元:
出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」
特定技能「介護」で受け入れる際の注意点
ここからは、特定技能「介護」で外国人を受け入れる際の注意点について見ていきましょう。
特定技能外国人への支援義務が発生する
特定技能外国人を雇用する場合、受け入れ機関には外国人に対する個別の支援義務が発生します。
特定技能制度を利用する際に策定する支援計画では、外国人の仕事だけでなく、暮らしに必要な契約の補助や日本語学習機会の提供など、日常生活も含めた各種支援を行わなければなりません。支援計画は雇用する外国人ごとに作成するため、個人に合わせた適切なサポートを考える必要があります。
1つの事業所で受け入れられる人数に上限がある
介護分野においては、1つの事業所で受け入れられる特定技能1号外国人の人数に上限があるため注意が必要です。具体的には「事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること」と定められています。たとえば、1つの事業所に常勤している日本人介護職員が3人ならば、特定技能外国人の受け入れは最大3人までです。
介護分野に特定技能2号はない
特定技能には1号と2号があるものの、介護分野は既存の在留資格「介護」で永続的かつ広範囲の業務に就けるため、特定技能2号の対象分野ではありません。したがって、介護分野で特定技能1号を修了しても2号へは移行できない点に注意が必要です。
特定技能制度を利用して来日した外国人が引き続き介護士として働くためには、介護福祉士の資格を取得して在留資格を「介護」に変更する必要があります。
原則として自由に転職が可能
先述したように、特定技能外国人は自由な転職が可能です。これまで従事していた分野から別の分野へ転職する場合は該当分野の試験に合格する必要がありますが、たとえば、介護職から介護職といった同一分野への転職には制限がありません。自社の待遇や評価制度、キャリアパスの整備などが不十分な場合、外国人がより好待遇の職場を求めて早期離職してしまう可能性があるでしょう。
参照元:
出入国在留管理庁「雇用における注意点」
出入国在留管理庁「介護分野」
厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
特定技能「介護」とほかの在留資格の違い
「特定技能」のほかに、介護分野は「介護」「特定活動」「技能実習」の在留資格で勤務が可能です。
| 介護 | 特定活動 | 技能実習 | 特定技能 | |
| 制度の目的 | 専門的な介護技術を持った外国人材の受け入れ | 国際連携の強化 | 開発途上地域出身の外国人への技能移転 | 人材不足への対応 |
| 在留期間 | 制限なく更新可能 | ・原則4年(条件を満たせば5年) ・介護福祉士資格取得後は制限なく更新可能 |
最長5年 | 最長5年 |
| 日本語能力 | JLPTのN2相当 | ・インドネシア、フィリピン:JLPTのN5相当 ・ベトナム:JLPTのN3相当 |
・入国時:JLPTのN4相当 ・入国1年後:JLPTのN3相当 |
・JLPTのN4相当 ・介護日本語評価試験合格 |
| 受け入れ人数枠 | 制限なし | 原則1ヶ国につき2名以上5名以下 | 常勤介護職員の総数や在留資格(1号~3号)の種類による | 常勤介護職員の総数が上限 |
| 従事できる業務 | 制限なし | 制限あり(介護福祉士資格取得後は一部の事業所で訪問系サービスへの従事が可能) | 単純労働、訪問系サービス以外 | 規定内であれば基本的に制限なし |
比べてみると、在留資格「特定技能」は制限が少ないことが分かります。採用のしやすさや幅広い業務を任せられる点を踏まえると、バランスの取れた人材といえるでしょう。
以下でそれぞれの特徴を紹介するので、改めて特定技能との違いをチェックしてみてください。
介護
在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人に付与されます。取得するルートは、「介護福祉士養成施設で2年以上学んでから介護福祉士の資格を取得する」もしくは「ほかの在留資格で実務経験を3年以上積み、介護福祉士の資格を取得する」の二通りです。なお、特定技能から介護への移行は後者に当たります。
養成施設での学習や実務経験から高い専門性を身に付けており、夜勤や訪問介護サービスに従事できるのが特徴です。
特定技能との大きな違いとして、在留資格「介護」には在留期間の更新回数に制限がありません。長期的に日本で働き続けられ、将来的には永住者となる道もあります。
外国人が日本で介護福祉士の国家資格を取得するのは簡単なことではありません。その難関を突破した人材のなかには、ほかの外国人の教育係をしたりケアマネジャーを取得したりと、着実にキャリアを築いている人もいます。
※2027年3月までに養成施設を卒業する外国人は、国家試験に合格していなくても介護福祉士の資格取得者として扱われる経過措置の対象です。卒業後5年以内に国家試験に合格するか、5年間連続して実務に従事することでその後も介護福祉士資格を保持でき、在留資格「介護」で在留できます。
特定活動
在留資格「特定活動」は行う活動によって種類が異なり、そのうち「EPA介護福祉士候補者・介護福祉士」の2種類は介護士としての従事が可能です。
EPA介護福祉士候補者とは、経済連携協定に基づいて日本の介護施設で働きながら介護福祉士を目指す外国人のことを指します。対象国となっているフィリピン、インドネシア、ベトナムの3ヶ国からのみ受け入れ可能です。
母国で学歴や資格の条件を満たしたあと、各国ごとに定められた日本語能力の基準に合格した外国人がEPA介護福祉士候補者として入国できます。その後、日本での研修を終えたあとに介護事業所での就労が開始するという流れです。
4年間(条件を満たせば1年延長)のうちに、介護福祉士の国家試験に合格できれば特定活動「EPA介護福祉士」または「介護」に在留資格を変更でき、引き続き日本で働けます。
介護福祉士の資格を取得するまでは、介護保険施設、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイでの勤務です。資格取得後は、条件を満たした事業所の訪問系サービスにも従事できます。
なお、2024年度の介護報酬改定により、EPA介護福祉士候補者も施設側が能力的に問題ないと判断すれば、雇用直後から人員配置に含められるようになりました。
「特定技能」との違いとしては、受け入れ国が限定されている点が挙げられます。また、経済連携協定のもとしっかりとした仕組み作りがされており、雇用する際は調整機関である「公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)」を必ず通さなくてはなりません。
技能実習
開発途上地域の人材育成を目的とした「技能実習制度」も、外国人介護士の雇用が可能です。在留資格「技能実習」を取得した技能実習生は、施設と雇用契約を締結し働きながら介護技術を学びます。
技能実習生が従事できる業務は、単純労働と訪問系サービス以外です。夜勤は「技能実習生以外の職員も配置する」「2年目以降から始める(努力義務)」などの条件を満たせば行えます。なお、技能実習生も施設側が能力的に問題がないと判断すれば、雇用直後から人員配置に含められるようになりました。
技能実習には1~3号の種類があります。入国時は「技能実習1号」ですが、1~2年ごとに試験を受けて合格すれば2号・3号へと移行可能です。3号まで移行できれば、最長5年間日本で働けます。期間満了後は介護福祉士の試験に合格して在留資格「介護」に変更する、もしくは「特定技能」に移行するといった選択肢があり、同じ施設で永続的に働き続けることも可能です。
技能実習と特定技能の大きな違いには、制度の運用について「開発途上国の人材育成」が目的なのか「国内の人材不足の解消」が目的なのかが挙げられます。技能実習制度は適切な制度運用がされているかどうか、関係機関からの監査や訪問指導が細かく入るのも特徴です。
なお、技能実習制度は将来的に廃止が決定しており、2027年4月1日からはこれに代わって「育成就労制度」が運用開始となります。
参照元:
出入国在留管理庁「介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて」
出入国在留管理庁「在留資格『特定活動』(EPA看護師、EPA介護福祉士及びそれらの候補者)」
外務省「我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)「トップページ」
出入国在留管理庁「外国人技能実習制度」
出入国在留管理庁「育成就労制度」
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
まとめ
特定技能制度は人手不足の業界を救うための制度といっても過言ではありません。特定技能「介護」の在留資格をもつ外国人は、一定水準の介護の知識や日本語能力を身に付けた状態の人材なので、即戦力としての活躍も期待できます。
ほかの在留資格と比較して雇用難易度もそれほど高くないため、初めて外国人を受け入れる企業もスムーズに準備・手続きを行えるでしょう。採用コストを割くのが難しかったり不明点が多く不安を感じたりする場合は、業務の一部を登録支援機関に委託するのがおすすめです。
特定技能「介護」で雇用する介護施設での雇用事例は「誠実なケアで指名も獲得。外国人採用で生まれる、新たな交流と活気」の記事をご確認下さい。外国人材の採用を開始したきっかけから、現場のリアルな所感までインタビュー形式でご紹介しています。